2015/07/02

海外企業にどうやって就職するの?

【はじめに】
ご存知のように、日本企業には新卒採用とキャリア採用があります。学部卒業や修士修了の場合、日本では新卒採用になり、卒業1年前に就職活動をします。博士修了の場合、即戦力として扱われ、キャリア採用になる場合があります。欧米企業には新卒採用というのがなく、日本のキャリア採用同様、いつでもopenです。

欧米企業では、優秀な人材を集めて短期で雇用し、高待遇を与えます。企業と雇用される側が対等で、雇用条件について交渉ができるのも特徴です。給料、福利厚生、雇用期間、仕事内容について話し合います。我慢して仕事をしないのが欧米スタイルです。終身雇用ではないので、経営状態が悪化すると急に解雇される恐れがあります。一方で、雇用される側は、より待遇のよい仕事が見つかれば、簡単に転職できます。様々な企業で多くの経験を積んでステップアップしていき、どんどん高待遇を受けることができます。数人のグループで成果を上げられれば、転職先では数十人規模のグループを任されるかもしれません。 博士号を持っているとすぐに管理職に就くことができ、若いうちからやりがいも得られます。20代で8ケタの給料も夢じゃないです。自己成長し続ける限り、転職の可能性がどんどん広がり、年齢問わず再就職に困りません。


【欧米企業への転職準備】
日本の大学院に行っている場合、修士や博士修了後に海外企業に勤務するのにはかなりハードルがあります。 日本国内に支店がある場合は、支店を通じて就職面接を行い、国内勤務になるでしょう。現地で働きたい場合は、博士1年生以下なら、インターンに申し込むことを勧めます。アメリカでは、学生の間にインターンで実際に仕事して、それが評価されます。良い働きをしている、社内の人とうまくコミュニケーションがとれると判断されると、採用の話になります。

・日本の大学院に行っている場合
博士2年生以上の場合、国際会議で賞をとるか、海外の大学にポスドク勤務を挟むのが良いでしょう。国際会議で良い研究成果を出して、良い発表をして招待講演や賞をとると企業から声がかかります。ありきたりですが名刺を作っておくといいです。記載項目として、名前と連絡先、所属だけでなく、Linked inや自分の紹介ホームページのアドレスを書いておくといいでしょう。ホームページには必ずCVをダウンロードできるようにし、そのCVも毎年更新しておきます。白い余白のある名刺がいいと思います。相手がその場でメモしやすいので。名刺交換した場合は、必ずお礼メールをしておきます。次にメールする際のバリアが下がるので。

・欧米の大学院に行っている場合
ビザの問題も少なく比較的容易です。企業から大学に直接リクルートの案内が来ます。秘書さんに聞く、ボスに推薦してもらう、という方法も効果的です。プロセスとしては、セミナーに参加→登録→大学のカフェで1次面接→工場見学・本番面接→2週間以内に働き始めます。一次面接は卒業後または卒業1か月前に行います。日本のように半年以上前に連絡しても取り合ってもらえません。欧州では、博士修了後に就職活動することも多く、その間無収入状態になることもありますが、ボスがポスドクとして数か月雇ってくれたりします。欧米の卒業時期が決まっていないのと同様、就職活動時期もいつでもopenです。


【欧米企業への転職方法】
知っている企業、行きたい企業からどんどんネットで応募していきます。募集は突然出て、採用者が決まると直に消えるので、こまめにチェックすると良いでしょう。企業の見つけ方は、ネット検索、linked in、転職サイトなどがあります。 学部生の場合は、ネットで就職サイトに登録するかもしれません。日本語と英語を話せるだけでも、多数の雇用があります。説明会は、履歴書を持って人事の人と1対1で話すだけです。 問題点は、ビザと専門性の合致です。

ネットでの応募は、履歴書(resume)を送るだけです。これまでの経歴をわかりやすく本気で書きます。自分の長所をアピールするのですが、詰め込みすぎず字を小さくしすぎないで、2ページ以内に収めます。企業によっては、カバーレターや博士論文の要旨などが求められます。カバーレターは、resumeを読んでもらうために書くもので、最初と最後にresumeを読んでもらう、面接に呼んでもらう機会をくれたお礼を記載します。どこで応募を知ったか、どうして応募するのか、自分のどういう長所が採用にマッチするのかなどをアピールします。

たまにresumeと一緒にボスなどの推薦refereeが求められることもありますが、一般的には面接が決まってから出すので、毎回書いてもらう必要はありません。この推薦書は非常に重要で、ボスもそれを承知で忙しい中数時間かけて書いてくれているはずなので、周囲への感謝は大切にしましょう。

resumeを読んでもらい、企業がこの人材は採用内容にマッチすると思えば、電話がかかってきます。電話は、なるべく落ち着いた場所で、立って話すと良いです。話がうまく合えば、企業での面接日程などが伝えられます。 面接では、IT系なら、「日本に自動販売機は何台あるか?」といった、地頭を試される質問が来るかもしれませんが、製造業ではあまりそんな質問はありません。「同僚と関係がうまく行かなかった時、プロジェクトが思うように進まなかった時、あなたはどうしますか?」といった、トラブル対処策などが聞かれるようです。

resumeの書き方など:MIT研究者の就職活動記録


【日本企業への転職との比較】
・特徴
多くの企業で、福利厚生が優れており、年齢と共に徐々に給与が上昇していく年功序列制度をとっています。若いうちは給料が安く、その後も大きな昇進がありません。社員が平等に扱われることが多く、福利厚生や給料も同期であまり差がありません。「自分の能力に自信がある」「もっと給与が欲しい」という上昇志向の強い人には向かないと言えます。20世紀までは、新卒採用されてから定年退職するまで経営破たんの恐れがなく、安定な生活が確保されていました。首になることも滅多になく平穏無事に暮らせます。家族を養いつつ趣味を楽しむことが幸せ、という人にうってつけの環境だと思います。

年功序列制度では、長期計画で企業に適した人材を育成できます。しかし、企業の判断・配属に委ねすぎていると、思っている以上に自己成長できていないリスクがあります。単調な仕事に忙殺され続けている場合、スペシャリストになり損ね、マネージメント経験も少ないまま、リストラや事故があった時に転職・再就職の道が断たれることもありえます。

社会人どうしが学び、教え合うカフェ:みらい研究所

・転職方法
日本企業でも、僅かですがキャリア採用での転職が可能です。キャリア採用の場合、専門性が合致しているもしくは、以前の職場で大きな業績をあげている必要があります。教授の推薦、もしくは直接リクルータなどの企業関係者に聞くと採用される可能性が高まります。まずは企業サイトをみて、募集職種に合致するかを調べます。博士過程の場合、進学前から企業のキャリア採用条件を見ておくと、将来設計の幅が広がると思います。登録1年間は、新たに募集が出た際にメールや電話で連絡してくれるので、登録だけでもしておくといいと思います。登録すらできない場合は、直接人事に連絡するしかありません。個人的には、人事ではなく、その部署の人と直接話して雰囲気を知るのが企業選びに大事だと思います。

キャリア採用は募集が少なすぎて、希望に合う仕事がなかなか見つからないかもしれません。その場合は、転職サイトやハローワークを利用します。企業のキャリア採用に直接応募するより、リクナビなどに登録して非公開求人として雇用される方が、採用される可能性も高いようです。学会などで知り合った企業の人に採用をお願いするという方法もありますが、部長以上でないと人事権が弱いみたいなので注意しましょう。海外在住の場合、日本の電話番号が使えない、TOEICを受け難いという短所があります。面接も日本に行くことになりますが、1次面接の場合、電話もしくはskype対応を頼んでみてください。


【さいごに】
日本の高学歴の工学出身者は、就職活動において、とても待遇が良いです。就職氷河期にあっても、数百社の中・大企業の中から、推薦で行きたい企業を好きに選べたりします。説明会に行かなくても、企業の人が直接会いに来てくれたり、面接も1回だけだったりします。そんな恵まれた状況で、優秀な友人たちがこぞって行く企業が安定企業でした。安定企業だけが毎年、推薦枠から溢れていました。

「社会的に恵まれている皆さんがリスクを取らないで、いまの日本でいったい誰がリスクを取るというんですか」にという意見に同意します。私は、とあるサイトの
 臼井郡長「ここにいれば,ぶじに人生をすごすことができる」 
 星一「その,ぶじな人生が面白くないのです」 

これに、すごく共感できる!!