2015/07/29

物作りで起業するには?

【手順】
 1. 仲間を集める。
 2. アイデアを出す。
 3. 家などでプロトタイプを作る。できれば完成形まで。
 4. 投資家を募る。
 5. 製品化開始と同時に量産してくれる工場を探す。会社を正式に立ち上げる。



【0.情報収集】
もし近くにオフィスがあれば行ってみてください。セミナーやカンファレンスに参加することでネットワークがいっきに広がるし、情報がたくさん手に入ります。運が良ければ投資家が目を付けてくれるかもしれません。NY、サンノゼ、ボストンでは多数のカンファレンスが行われています。ググってみてください。
 東京オフィス例:ABBAlab, ボストンオフィス例:CiC


【1.仲間】
売るサービスを大きく二つに分けると、ハードとソフトがあります。ソフトなら一人でもできるでしょう。アプリのようにアイデアから完成までの時間が短いものは、マーケットとかややこしいことを考える前に、バグが多かろうがなんだなろうが、とりあえず作ってみた方が良いです。他者に先を越される前に。

ハードでも、既存の技術を改良するだけであれば、一人でもできます。工学博士のような深い知識もいらないし、専門学校のような技術も不要です。ただし、他製品との違いを出すために、デザイン性などで付加価値をつける必要がでてきます。友人にデザイナーがいれば組んでみるとより良いかもしれません。
 参考例:BSIZE

シリコンバレーで行われているような、世界を変えるような製品を、全て自分一人で作るのは結構大変です(Steve Wosniakはどうやってたんだろ?)。"良い"仲間を集めるのはとても重要であり、かつ大変なことです。仲間は、分野に偏りがない方が開発速度が速いです。異分野どうしで3~5人いると良いでしょう。最近では高性能3Dプリンタもあるので必須ではないですが、電子工作、プログラミング、金属加工などの専門家がいると強いです。文系の仲間は不要です。経営のことは起業した後で十分です。アイデアを出すために、バイオや化学の専門家がいると強いです。いい仲間に恵まれると、最高に楽しいです。



【2.アイデア】 
仲間と煮詰まるまでブレインストーミングでアイデアを出し続けます。その中から実現可能性の高いもの一つに絞ります。自分達で実現できなさそうなものは、アイデアコンクールに投げてしまってもいいかもしれません。多少の資金集めにはなると思います。

ハードは時間もお金もかかります。味の素やコカコーラは、半永久的に売れており、究極の製品だと思います。なるべく他者に真似され難い製品をつくりたいものですが、その分、特殊なノウハウや知識が求められ、実現までに長い時間とコストを要するかもしれません。ハードは、自分で形にできると、改良もしやすく何かと便利です。工業高校、専門学校、高専に通うか、もしくは電子工作部やプログラミング部などのクラブに入っていると、知識や技術を生かせるかもしれません。

例えば、「ガン検査紙を作りたい!」と言っても、世界で誰も実現していないものを一から作るには大変です。まず、「妊娠検査薬のように、セルロースに血液を浸透させ、事前にセルロースに吸着させていた金属と反応させて・・・」とアイデアを具体化させるために、チーム内で流体力学や生化学などの高い専門性を幅広く網羅している必要があります。最先端のものを作りたい場合は、博士課程(工学)まで進学した方がいいかもしれません。一度企業に就職して、自己資金を増やしつつ、生産工程の経験を積んだり、海外工場への人脈を広げるのも一つの選択です。海外留学して、仲間を集めつつ、語学力を培うのも一つでしょう。


【3.作製】
a. 試作
方向性さえ決まれば、ただ実行するのみです。とりあえずやってみます。米国は土地も広く、"ebay" や "Craigslist"などの中古品やオークションサイトが充実しており、自分の敷地内で始めやすい環境にあります。米国に住んでみると分かりますが、Steve jobsのように、ガレージでやる人が多いのも頷けます。日本でハードを作るなら、仲間と会える東京にすぐ出れて、且つ土地が安い地域(栃木や山梨など)が始めやすいかもしれません。ナノテクやバイオなどの高度機器、テスト試料の測定には、公設試大学の共用装置使う方法があります。その近くに活動拠点を設けるのも一つです。

この段階では、まだ自費で行うのが良いと思います。仲間と喧嘩したり、ダメっぽかったらすぐに辞めれるからです。試行錯誤して、最良・最速・最安の製作方法を探ります。今後の方向性にもかかわる、とても重要な期間です。製品を完璧な形にする必要はありません。動作さえすれば、いびつな形でも大丈夫です。製品によっては他の友人に試作品を使ってもらい、感想を聞くのもいいでしょう。ただし、この段階でSNSなどで広めすぎると、アイデアをパクられる恐れもあるので注意。(筆者の試作例:

b. (完成品)
試作品やアイデア段階でも資金提供してくれるベンチャーキャピタルもあるので、調べてみてください。なので必須ではないですが、できれば一つでも完成形を作ってしまった方がより信頼が得られます。完成形を作るのに設備を全て自分で持つ必要はなく、大学のものを借りるとか、他国の工場に設計書を送って製作依頼することもできます。また、microsoftのような大企業にパートナーになってもらい、製作サポートをしてもらうのも一つです。

資金は家族や友人にサポートしてもらうだけで十分な場合もありますが、自分たちで賄えない場合は、個人投資家に募るのも一つです。NYやシリコンバレーなどでは、過去に他者から投資してもらって成功した投資家も多く、恩を返したい、若手育成を考慮したい、という考えを持っています。業種や最終目標によっては、すぐに見つかるようです。一般的には、何十件も営業をするわけですが、ツテが全くない日本人の方には、とりあえずNYなどにいって日本人コミュニティを探して、現地の人に熱く語り、紹介してもらうのも一つかと思います。


【4.資金集め】 
これが一番大変です。デモ作品ができれば、ベンチャーキャピタルに募ります。まずは資料をそろえます。情報に強い仲間がいるなら、シミュレーションや3Dデザインで、自分たちの理想の製品の形を描き、資金集めに備えます。動画やイメージを活かして、コンセプトや今後の方向性などをまとめます。ベンチャーキャピタルに援助してもらえたら、もうそれですでに経歴としてはプラスなので、会社が潰れてもいいからガンガンやります。潰れたらまた一からやればいいだけです。経験がしっかりと残るのでビビるだけ損です。

ベンチャーキャピタルとして、アクセラレーターという仕組みがあります。アクセラレーターに応募し、書類審査およびピッチコンテストで勝ち抜き、無事に採用されれば、資金と一緒に様々なサポートが受けられます。税金やビザ、知的財産に関する講義やオフィス、ハードを作る設備など。日本からでも米国の資金援助をしてもらえます。ぜひ、応募してみてください!
 アクセラレーター:Y combinatortechstarsmasschallenge富士通Samurai

投資家と自分のやりたいことが必ずしも一致するわけではありません。お金欲しさに、無理に投資家の意見に合わせてしまうと、何のために起業するのか分からなくなってしまいます。そんな場合、クラウドファンディングを利用する方法があります。クラウドファンディングは、ネットを通じてアピールして、一般人に投資してもらう、というものです。投資してもらったお金は自分の自由に使えます。購入型、寄付型、投資型などのプランがあります。投資家側としてのデメリットとして、よくある購入型でも、投資しても必ずしもその製品を貰えるわけではありません。想定額と実際に必要な金額は異なることが多く、計画通りに行かないことがあるからです。また、ソフトはクラウドファンディングでは資金調達しにくいそうです。起業する側としても、クラウドファンディングで資金が集まらない、または製品化までたどりつけなければ、「価値のない物づくり野郎」と版を押されてしまいます。「資金難になった際の最後の選択」と考えた方が良いようです。また、オンラインで資金調達を行うので、作りやすい製品の場合、資金集めしている間にも海外で真似される恐れがあります。
 クラウドファンディング:kickstarterCampfireReadyfor


【5.会社設立】
会社を作ること自体はそう難しくないです。書類作業が大変なだけで、日本でもオフィスさえあれば1円から作れます会社自体の作り方は、いろんな書籍が売られています。

ハードにとって重要なのは量産化です。量産化の目途が立てば、更なる大口投資家を集めやすくなります。品質という点では、日本や台湾、韓国の工場が良いですが、高コストになります。一方、中国やメキシコの工場にツテがあると大きいですが、故障しやすい、アイデアを盗まれるといったリスクも想定しておく必要があります。人命に関わる製品は、必ずコストよりも信頼性を重視しましょう。高コストで売れそうにない場合は、客層と販売量を制限します。教育、環境に優しい、動物保護、医療あたりは、高価格でも売れる可能性があります。
 参考例:テスラモーターズNeXT

人材確保はオンラインでもできます。ネットで募集し、skypeで面接し、雇用できます。世界中の人を現地に行かずに雇えるので、世界展開にはもってこいです。雇用される側の立場でいうと、ギラギラしたstart up企業は常に最高のパートナーを探しているので、登録しているだけで声がかかることもあります。
 人材SNS: upworklinked in

会社が立ち上がっても安心できません。当然、最初は赤字まみれです。量産し、経営が軌道に載るまでは我慢です。SNSやHP開設、いろんなイベントに参加して、商品を認知させましょう。とりあえず無料配布して使ってもらうのも一つです。利益よりも先に、広める方が最優先です。高評価が得られれば、数が売れ、利益が出るはずです。ここまで来れる企業数は、起業する数の数%に過ぎません。ここが正念場です。自分の製品が世に出回るのもすぐそばです!頑張ってくださいね!


【オススメ文献】
TED-伊藤穣一:物づくりのシステムも年々変わってきています。3Dプリンタも古くなって新しいシステムができれば、ここに書かれた起業プロセスも使い物にならなくなるでしょう。